無名居士の 男70代は死に時 死に支度







気の向くままのいいかげんな内容 誤字脱字御免

姉さんが逝った日


50年近くになる同居人
私は彼女のことを姉さんと呼んでいた
親子ほどの年の差があった
姉さんは92歳
股関節を傷めて人工関節の手術をしたが
ベッド生活を丸5年迎えた10月半ば
9月に脳溢血で意識不明になった後遺症で
その時は命はとりとめたが
話せなくなり食事が困難になり
だんだん弱っていった
点滴でもっていた状態だった
食事ができるようになったら点滴をやめ
食べられなくなったらまた点滴を始め
そのくり返しだった
一度目の脳溢血で無意識状態になったが
その時は点滴を続け1週経たないうちに
食事ができるまでに回復した
10月に入ってその点滴をするとき
ほとんど話せなくなっていた姉さんが
大きな声で「イターイ」と叫ぶようになった
これまで一度もそんなことはなかったのに
「姉さん 痛いときは声が出るんだね」と
私は冗談を言って笑った
でも点滴を姉さんがいやがるようになったとき
その点滴をやめることを先生に申し出た
先生には姉さんも私も延命治療はしないことを
事前に申し出ていた
その時点で点滴をやめることは
食事をとれなくなったらもう終わりだということが分かっていた
固いかたいあずきバーを口の中で転がして食べていた
チョコが好きだったからチョコアイスも食べさせた
1本食べてくれていたのが半分になった
誤嚥が始まった
いよいよ食べられなくなった
あずきバーもチョコアイスも
姉さんの数十年からの洋裁時代のお友達が
外出先から電話してくれた
それまでにも姉さんの状態を知って
遠くから毎日のように様子を見に来てくれた人だ
その人も80になっている
無理はしないでくださいと言っても
姉さんには世話になったからと言って
見舞いに来てくれていた
電話があった時
もう姉さんはアイスも食べられなくなっていた
それは土曜日の事だった
金曜日は入浴サービス
まだ元気だったし事前の血圧や脈拍などのチェックも異常なかった
それで入浴をいつもの通り済ませてその翌日
土曜日から姉さんに異常が始まった
土日 先生には連絡しなかった
その時が来たことを私は感じていた
そして日曜の昼過ぎ 姉さんのことを心配して
お友達からその電話があった
私は今日明日の命だと思うと伝えた
電話でそう話していた時
姉さんの様子を確認すると
息遣いの変化が少し前にあったけど
その時はまだ少し荒くなったが息はしていた
電話を切ってもう一度姉さんの様子を確認に行った
するともう息をしていなかった
鼻に指をあてたり私の顔を近づけたり
映画やドラマで人が亡くなったときにやることを
私も真似ていた
私が電話でお友達と話しているとき
姉さんは静かに逝った
来るべき時が来た
姉さんが元気な時に言ってたこと
楽になるし
人生の卒業式だし
おめでたいから笑って送るよ
歓喜の歌でね
そうする日がやってきた
先生に連絡とってもらい
死を確認してもらったのは夕方になっていた
それから先生に紹介してもらった葬儀屋さんに連絡
その方々も驚くほど姉さんは穏やかで
肌艶もよくきれいな顔をしていた
お友達からの電話は虫の知らせだったのだろうか
夜になってその方も駆けつけてくれた
姉さんが亡くなった時に電話したがつながらなかった
お友達が会った姉さんはすでに死化粧をしていた
翌月曜日は祭日 ゆっくり姉さんと過ごせた
火曜日出棺 そして火葬
出棺には訪問看護サービスの方々が来ていただいた
お友達は私が辞退したけれど
どうしてもという申し出を断れず
火葬に付き合ってくださった
私流の何もしないやり方で姉さんを送った
あとから私宛のメモには
誰にも知らせず何もしないでと書いてあった
火葬を済ませ 姉さんが小さな骨壺に入って
家に戻ってから姉さんの甥御さん姪御さん
姉さんのもう亡くなっている弟さんの奥さんに
電話で姉さんが亡くなったことを伝えた
それから2か月が過ぎた
まだ何も手を付けていない
ベッドが無くなった部屋に
二つカラーボックスを置いた
そこに姉さんが若い時から読み親しんでいた
暮らしの手帖を並べるつもりだが
整理できるのはいつになるか
でもこうして姉さんの最後の時を書けた
「姉さんの日々」を書き続け
「姉さんのいない日々」を書き始めて
数日で書けなくなったが
いつかまたこうして書き続けられる日が来ると
私は思っている


こちらの記事を読むことで
その力を頂いていると思う
ここに見習うべき人がいる
その文章を読むことで
私の何かが変わっていくと思う
この出会いに感謝している
この縁はMuragonに頂いた
Muragonとの縁は
熱中していた古い日本映画のある記事を
Muragonのブログで知ったこと
その文章や他の記事にも共感したこと
それがその人の信頼と
その人が利用しているブログへの信頼になり
このご縁になった


×

非ログインユーザーとして返信する